浦和地方裁判所川越支部 平成12年(ヨ)59号 決定 2000年9月27日
債権者
甲野花子
債権者
乙山月子
右両名代理人弁護士
堀哲郎
同
神山祐輔
同
鈴木幸子
債務者
雪印ビジネスサービス株式会社
右代表者代表取締役
羽川僚一
右代理人弁護士
太田恒久
同
小根山祐二
同
石井妙子
同
深野和男
主文
一 本件申立てをいずれも却下する。
二 申立費用は債権者らの負担とする。
理由
第一申立ての趣旨
一 債権者らが,債務者との間で雇用契約上の地位を有することを仮に定める。
二 債務者は,平成12年3月21日以降,本案判決確定に至るまで,毎月27日限り,債権者甲野花子に対し金9万7135円ずつ,債権者乙山月子に対し金15万4856円ずつを,それぞれ仮に支払え。
第二前提事実等
一 当事者等
1 債務者(雪印ビジネスサービス株式会社)は,昭和46年4月30日に設立された新星ビルサービス株式会社(以下「新星ビルサービス」という。)と昭和28年に設立された株式会社北栄社が,平成12年4月3日に合併して発足し,雪印グループを主要取引先として,清掃・警備を中心とした施設の総合保守管理業務及び保険業務等を目的とする株式会社である。本社のほかに全国に2つの事業所,川越をはじめとする12の営業所が設けられ(<証拠略>),同月1日時点で,325名の従業員(出向26名込み,社員107名,嘱託82名,パートタイマー136名)を擁している(<証拠略>)。
本件で問題になる債務者川越営業所は,昭和48年4月,雪印乳業株式会社(以下「雪印」という。)技術研究所からの総合管理業務受託に伴い,同技術研究所内に開設された営業所であり,平成12年4月1日時点で所長以下30名の従業員(社員14名,嘱託7名,パートタイマー9名)が清掃,警備等の業務に従事している。
2 債権者甲野花子(昭和7年8月15日生。以下「債権者甲野」という。)は,昭和51年3月15日に債務者(新星ビルサービス)にパートタイマーとして雇用された。以来,債務者川越営業所所属の清掃係として,同所にある雪印技術研究所内において清掃業務に従事してきた。債権者甲野は,平成4年3月21日に,債務者から,1年間の期間の定めのある雇入通知書(<証拠略>)を交付され,その後も,毎年3月21日から1年間の期間の定めのある雇入通知書を交付されていた(<証拠略>)。平成12年3月20日時点の債権者甲野の勤務内容は,1日の労働時間4時間30分,週6日勤務であった。
3 債権者乙山月子(昭和7年1月19日生。以下「債権者乙山」という。)は,平成5年2月25日に,同年3月20日までの試用期間(<証拠略>)を経て,債務者(旧社名・新星ビルサービス)との間で,嘱託として,同月21日以降1年間の期間の定めのある雇用契約書(<証拠略>)を取り交わした。以来,債務者川越営業所所属の清掃係として,同所にある雪印技術研究所内において清掃業務に従事してきた。その後も毎年3月21日から1年間の期間の定めのある雇用契約書を取り交わしていた(<証拠略>)。
4 債権者らは,債権者らと債務者の間の雇用契約について,後記のとおり,形式的には期間の定めのある雇用契約であっても,実質的には期限の定めのない雇用契約である旨主張している。
二 債務者の雇用態勢について
1 債務者では,社員のほかに,社員より1日,1週,又は1か月の勤務時間が短い者を「パートタイマー」(年齢のいかんを問わない。)として,勤務時間は社員と同じ者のうち,60歳を超える者を「嘱託」として,それぞれ位置づけてきた。
パートタイマーは,就業規則が適用されず,パートタイマー就業規則(<証拠略>)が適用される。パートタイマーには,給与体系に役付手当がなく,給与の計算方法も時給制若しくは日給制である。定年制度はなく,退職事由として,「雇用期間の定めがある場合において,その期間が満了したとき」の規定がある(パートタイマー就業規則7条1号)。
嘱託は,債務者の就業規則(<証拠略>)が適用されるが,社員とは異なり,退職金が支給されない。嘱託として採用される者には,債務者の従業員として定年退職し,なお健康状態,能力等が認められ再雇用された者と,新規採用時の年齢が60歳を超えていた者の二通りがある。
2 債務者の就業規則9条には,「従業員の定年は60歳とし,60歳に達した日(誕生日の前日)をもって,自然退職とする。ただし,健康状態,能力等により引続き嘱託として再雇用することがある。」と規定されている。
3 債務者は,平成4年4月1日施行の再雇用取扱基準(<証拠略>)において,債務者就業規則9条ただし書に定める再雇用の雇用期間について,「<1>満60歳から満65歳誕生日の前日までの5年間を対象期間とする。<2>ただし,業務上の必要性,余人をもって替え難い場合は,再延長することがある。」と,雇用形態については,「1年単位の嘱託契約とする。」とそれぞれ定めた。
三 雇用契約の不締結
1 債務者は,平成11年2月ころ,債権者らに対する同年3月21日以降の雇用契約の更新を一旦は拒絶した。その後,債権者らは,同月4日までに,雪印一般労働組合(以下「一般労組」という。)に加入し,債務者と一般労組との間で,債権者らの雇止めに関する問題につき協議した結果,同年8月4日,債務者は債権者らについて,同年3月21日に遡って,雇用契約を1年間に限り更新することにした。なお,債務者は一般労組に対し,債権者らについて平成12年3月21日以降の雇用延長は行わない旨を表明した(<証拠略>)。
2 債務者は,債権者らに対し,平成12年3月21日以降の雇用契約を締結しなかった。同日時点で債権者甲野は67歳,債権者乙山は68歳であった。
第三双方の主張の骨子等
一 債権者らの主張の骨子
1 期間の定めのない雇用契約
(一) 債権者らの各雇用契約の更新は,債権者甲野が約23回,債権者乙山が約6回であり,その間継続して雇用されたもので,雇用契約の更新手続は完全に形骸化しており,実質的には期間の定めのない雇用契約ということができる。
(二) 債権者甲野は,入社時に,当時の八重樫川越営業所長から,「丈夫なら,幾つまででも使いますよ。」などと言われ,入社以来10年位前までは特に契約更新の手続がとられなかった。
(三) 債権者乙山は,入社時に,「この歳(60歳)でも大丈夫ですか。」と聞いたところ,当時の坂場川越営業所長から,「身体さえ丈夫なら,70歳位まで使いますよ。80歳の人もいますからね。」などと言われた。
(四) 10年位前から始まった1年ごとの雇用契約更新手続では,当時の各所長から何の説明もなく,2枚の雇用契約書が配付され,そのうちの1枚に各人が自己の住所及び氏名を記載し,押印した上,提出するだけで,その契約内容の説明や確認は一切ないという形式的なものであった。
(五) 債権者らの仕事内容(清掃業務)は,債務者川越営業所所属の清掃業務に従事する正社員3名(いずれも女性)と全く異ならない。
(六) 仮に,期間の定めのない雇用契約とは認められないとしても,債権者らが期間満了後の雇用の継続を期待できることに合理性が認められることは明らかであり,解雇の法理が(類推)適用される。
2 解雇事由の不存在
本件雇止めは,前記のとおり,実質的には解雇であるところ,解雇が社会的に相当と認められるだけの合理的理由は存在しない。
なお,債務者が後記主張する業務の停滞,作業能率の低下,労働災害の危険の増加等は,何ら実証性がない。
3 賃金支払請求権
(一) 債権者らの賃金は,毎月20日に締め切り,当月27日に支払われる。
(二) 債権者甲野の賃金は,時給965円で,平成12年1月から同年3月までの平均月額支給額は9万7135円である。
(三) 債権者乙山の賃金は,基本給が14万6900円で,平成12年1月から同年3月までの平均月額支給額は15万4856円である。
4 保全の必要性
(一) 債権者甲野は,肩書住所地で,夫(71歳)及び長男(31歳)とともに暮らしている。夫は無職で月額年金約20万円を受給しているが,住宅ローンの返済が月額約7万円ある。また,長男からの収入も自身の生活費等の必要のため,債権者甲野を援助できる状況にない。
(二) 債権者乙山は,肩書住所地で,夫と2人で暮らしている。夫は無職で,月額年金約7万円(2人合わせて)を受給している。住居が借家であるため,月7万円余の家賃を支払っている。
(三) したがって,債権者らの収入が途絶えると,債権者ら及びその家族の生活が成り立たないことになる。
二 債務者の主張の骨子
1 債権者の主張は争う。
(一) 債務者と債権者甲野との雇用契約は,当初は期間の定めのないものであり,平成4年3月21日から1年間の期間の定めのある雇用契約になった。その更新手続が形骸化したことはない。
(二) 債務者と債権者乙山との雇用契約は,平成4年3月21日から1年間の期間の定めのある雇用契約であった。その更新手続が形骸化したことはない。
2 債務者は,人員の高齢化による非効率性,職務の停滞を解消するために,人員の低年齢化を順次推進していた。そして,平成4年4月1日から,再雇用取扱基準(<証拠略>)を定め,嘱託契約をする上限を65歳と定め,債務者川越営業所においても,65歳以上の従業員について,新規人員の補充が可能又は既存の人員による対応の可能性を考慮しながら,雇止めを実施していった。その結果,60歳以上の従業員数は,平成6年2月28日時点の15名から平成12年4月20日時点の6名にまで減少している。
3 本件について債権者らには,保全の必要性がない。
三 主要な争点
1 債権者らの雇用形態が期間の定めのない雇用契約といえるか。
2 債権者らについて,雇用の継続が期待できることに合理性が認められるか。
3 保全の必要性の有無
第四当裁判所の判断
一 疎明及び審尋の全趣旨によれば,以下の事実が一応認められる。
1 債務者の雇用態勢等
(一) 債務者は,従来から従業員の定年を60歳としていた。しかし,当時,職務内容の性質(現場作業で人気がなかった。)から,従業員の募集を行っても希望者は少なく,会社のニーズに合致する者(特に若年労働者)を採用したり,その者を定着させることが困難であったため,慢性的な人手不足に陥っていた。
(二) そこで債務者は,従業員の60歳退職後も,希望者の中から勤務成績が良好で,作業能率が低下しておらず,健康状態も良好と認められる者について,雇用期間を1年とする嘱託制度を導入した。
(三) しかし,定年退職者を嘱託として再雇用しても,人手不足になる場合があり,その場合には,例外的に,外部募集に応じて応募してきた60歳以上の者を嘱託として採用することもあった(債権者乙山がこの例)。
(四) 債務者は,平成4年4月1日,再雇用取扱基準(<証拠略>)を定めて,嘱託として雇用する者は,65歳までを原則としたが,人員の手当てがつかない場合や担当職務が高齢者でも支障の少ない者など,例外的に65歳を超えて雇用契約の更新を行う場合があった。
(五) 債務者は,平成7年4月1日,同日現在65歳以上の従業員について,平成10年3月31日までに可能な限り入替えを行う旨の人事方針を決定し,平成8年3月20日から平成12年3月20日までの間に,その当時63歳から73歳の者9名(債権者らは除く。)について契約更新をせず,雇止めを行った(<証拠略>)。
右人事方針決定の理由は,従前,人手不足を補うために60歳以上の者も嘱託として採用したり,パートタイマーの契約更新をしてきたが,一般に,従業員は高齢になるほど作業能率が低下し,労働災害などの危険が増大し,債務者の職務の停滞を引き起こすおそれが高くなるからであった。そして,債務者について,適材人員の確保が徐々に可能になるような環境が整ってきたためでもある(疎明の全趣旨)。
(六) 嘱託の雇用契約期間満了が近づくと,債務者は,各嘱託の適性,能力等を吟味し,従業員の補充状況をみながら,更新の有無を決定した。その結果,更新しないとされた者には,1か月前に通知を行い,更新するとした者に対しては,営業所長において,就業の場所,仕事内容,資格,雇用期間,給与,契約更新を明記した雇用契約書を交付し,嘱託が自ら住所氏名を記入,押印の上,会社に提出させていた。
また,パートタイマーについても,雇用期間満了が近づくと,嘱託と同じように更新の有無を決定し,更新することとした者に対しては,営業所長が雇用期間,仕事の内容,休日,休暇,賃金等を明記した雇入通知書を交付していた。
2 債権者甲野(昭和7年8月15日生)は,昭和51年3月15日に債務者にパートタイマーとして採用された(当時43歳)。以来,債務者川越営業所所属の清掃係として,同所にある雪印技術研究所内の清掃業務に従事してきた。平成4年3月20日,債権者甲野と債務者との間の期間の定めのない雇用契約が終了した。その上で,債権者甲野は債務者から,同月21日から平成5年3月20日まで1年間の期間の定めのある(証拠略)の雇入通知書を交付された。その後,債務者は債権者甲野に対し,毎年3月21日,1年間の期限の定めのある雇用通知書を交付し続けてきた(<証拠略>)。
(債権者らは,「債権者甲野は,<1>入社時に,当時の八重樫所長から,『丈夫なら,幾つまででも使いますよ。』などと言われ,<2>入社以来10年位前までは特に契約更新の手続がとられなかった。」旨主張する。ところで,右<1>の主張にそう(証拠略)など債権者甲野の陳述部分以外に入社時の八重樫所長の言動を客観的に裏付けるに足りる資料はなく〔そもそも,仮に,右言動があったとしても,これをもって債権者甲野の終身雇用を保障したものと解することは困難である。〕,右をもって,事実認定の基礎に用いることはできない。次に,<2>の主張について,確かに,債権者甲野の平成4年3月20日以前の雇用契約は,期間の定めのないものであったことが認められる。しかしながら,債務者の就業規則(<証拠略>)9条によれば従業員の定年は60歳であるところ,債権者甲野が60歳を迎える年である平成4年3月21日に異議なく(証拠略)の雇入通知書の交付を受けていること〔債権者甲野は,パートタイマーであるが,債務者は,社員である従業員と同様の人事政策を採用しようとしていたことは優に推認することができる。〕,右通知書には同日から平成5年3月20日までの雇用期間であることが明記され,そのことを条件に債務者に採用されたこと,債権者甲野が満60歳に達した日である平成4年8月15日に,債務者から,昭和51年3月入社以来今日まで業務に精励したことに感謝の意を表明された上,30万円の功労金を交付されていること,などの事情にかんがみると,債権者甲野の雇用形態は,平成4年3月21日をもって,期間の定めのある雇用契約になったことが認められる。)
(債権者らは,「債権者甲野について雇用契約の更新は多数回に及び雇用契約の更新手続は完全に形骸化しており,実質的には期間の定めのない雇用契約ということができる。」旨主張する。しかしながら,<1>債権者甲野の雇用契約上の地位は,パートタイマーであり,就業規則もパートタイマーのものが適用されること(<証拠略>),<2>パートタイマー制度は,もともと債務者従業員(特に正社員)の人手不足を補う一時的なものであって,もともと長期にわたる雇用を予定しているものではないこと,<3>債権者甲野が,期間の定めのある雇用契約を数回更新されたとはいえ,これは債務者側の人手不足の解消が容易ではなかったための一時的要因に過ぎないこと,<4>雇入通知書の記載文言などにかんがみると,雇用契約の更新手続が形骸化しているものとはいいがたい。債権者らの主張は採用できない。)
3 債権者乙山(昭和7年1月19日生)は,平成5年2月25日に,同年3月20日までの試用期間を経て,債務者との間で,嘱託として,同月21日以降1年間の期間の定めのある雇用契約を締結した(当時60歳)。以来,債務者川越営業所所属の清掃係として,同所にある雪印乳業株式会社技術研究所内の清掃業務に従事してきた。その後,債務者は,債権者甲野との間で,1年間の期間の定めのある雇用契約書を取り交わしてきた(<証拠略>)。
(債権者らは,「債権者乙山は,入社時に,『この歳(60歳)でも大丈夫ですか。』と聞いたところ,当時の坂場川越営業所長から,『身体さえ丈夫なら,70歳位まで使いますよ。80歳の人もいますからね。』などと言われた。」旨主張する。しかし,右の主張にそう(証拠略)など債権者乙山の陳述部分以外に入社時の坂場所長の言動を客観的に裏付けるに足りる資料はなく〔当時の債務者の雇用政策にかんがみると,坂場所長が債権者ら主張の言動をすることは極めて不自然である。〕,右をもって,事実認定の基礎に用いることはできない。)
(債権者らは,「1年ごとの雇用契約更新手続では,当時の各所長から何の説明もなく,2枚の雇用契約書が配付され,そのうちの1枚に各人が自己の住所及び氏名を記載し,押印した上,提出するという形式的なものであり,債権者らの各雇用契約の更新も多数回に及び雇用契約の更新手続は完全に形骸化しており,実質的には期間の定めのない雇用契約ということができる。」旨主張する。しかしながら,<1>債務者の雇用態勢には社員と嘱託とが峻別され,そのことは就業規則においても明記されていること(例えば8条2項),<2>嘱託制度は,債務者従業員の人手不足を補う一時的なものであって,原則として60歳以上の者に適用されるもので,もともと長期にわたる雇用を予定しているものではないこと,<3>債権者らが,期間の定めのある雇用契約を数回更新されたとはいえ,これは債務者側の人手不足の解消が容易ではなかったための一時的要因に過ぎないこと,<4>雇用契約書の記載文言などにかんがみると,雇用契約の更新手続が形骸化しているものとはいいがたい。債権者らの主張は採用できない。)
4 本件雇止めの経緯等
(一) 債務者は,平成11年2月17日ころ,債権者らに対し,同年3月21日以降の雇用契約更新を行わないことを口頭で通知した。これに対して,債権者らは,同年3月4日までに,一般労組(雪印一般労働組合)に加入し,債権者らの雇用継続の申入れを行った。そして,債務者と一般労組との間で,債権者らの雇止めに関する問題につき協議した結果,同年8月4日,債務者は債権者らについて,同年3月21日に遡って,雇用契約を1年間に限り更新することにし,平成12年3月21日以降の雇用延長は行わない旨を表明した(<証拠略>)。これに対し,一般労組は,同日以降の雇用契約については,その時点の状況(健康状態その他)を考慮の上協議する旨回答し,平成12年3月21日以降の雇用契約の更新については債務者と一般労組の間で合意に至らなかった(<証拠略>)。
(二) 債務者は,債権者らについて,平成11年3月21日から1年間の期間の定めのある雇用契約として扱うことにした。
(三) そして,債務者は,平成12年2月17日債権者乙山に対し,同月18日債権者甲野に対し,それぞれ,当該雇用契約を更新しない旨を伝えた。そして,同年3月20日の夕刻をもって,債権者を含む従業員のタイムカードを回収し,新たなタイムカードを発行せず,債権者らが債務者の従業員とは認めない対応をすることになった。
二 右認定事実によれば,
1 債権者らの雇用契約がいずれも期間の定めのある雇用契約であることは明らかというべきである。
2 債権者らは,「債権者らが期間満了後の雇用の継続を期待できることに合理性が認められる」旨主張する。
しかし,<1>前記認定のとおり,債権者らの雇用契約がいずれも期間の定めのある雇用契約であり,その更新手続が形骸化していることはいえないこと,<2>債務者が,平成7年ころから,60歳以上の従業員を順次減少させる人事方針を採っていたことは明らかであり(右人事方針は,作業の能率を上げ,労災事故などを減少させるためのものであって,不合理なものとは認められない),その政策が徐々に実施されていたこと,<3>債務者において,債権者らの雇用契約につき平成11年3月20日時点で一旦更新拒絶を決定したものの,一般労組との交渉の過程で円満解決のために,前記更新拒絶を撤回し,平成12年3月20日まで1年間の期間の定めのある雇用契約を締結し,その際,同月21日以降の雇用契約の更新はしない旨通告していることなどの事情にかんがみると,債権者らにとって,平成12年3月21日以降の雇用の継続を期待できる合理性があったとは到底認め難いというべきである。
3 そうすると,債権者らについて,解雇の(類推)法理の適用はなく,平成12年3月20日をもって,雇用契約が終了したものというべきである。
三 よって,その余の点について判断するまでもなく,債権者らの本件申立てはいずれも理由がないから,これを却下することとする。
(裁判官 小宮山茂樹)